1-4 ピロリ菌を診断する方法

一人の患者さんのピロリ感染を診断することで、患者さん本人やそのご家族の感染、そして次世代の感染、胃がんを防ぐことができます。

今回はピロリ菌の検査方法です。まず最初に結論から。ピロリ菌を100%正確に診断する方法はありません。どれもそれなりの精度のある検査方法なのですが、中途半端な検査なのです。1つの検査方法にのみ固執しすぎると見落としてしまうこともあるのです。しかし前回お話をした内視鏡の所見と、かつ複数の検査を組み合わせることでより精度を高くすることが可能です。繰り返しにはなりますが、当院では次世代の胃がんゼロを目指しています。

まずピロリ菌の検査は大きく二つのグループに分かれます。

①ある1点の胃の細胞のピロリ菌を調べる「点の検査」

・内視鏡で行う検査(迅速ウレアーゼ試験、鏡顕法)

②胃全体からのピロリ菌を調べる「面の検査」

・息の検査(尿素呼気試験)

・便の検査(便中抗原)

・血液、尿の検査、(血中、尿中抗体)

に分かれます。「点の検査」ではサンプリングエラーと言ってサンプルとしてとってきたところにたまたまピロリ菌がいなければ、ピロリ菌陰性(いない)と誤診してしまう可能性があるため、「面の検査」が良いと言われています。(現在のガイドラインでは点の検査も記載されているため間違いではありませんが・・)アメリカのガイドラインでは面の検査である息の検査、便の検査が推奨されています。

ピロリ菌の検査はどれも不十分なため2つまで同時に行うことが保険診療上認められています。しかし点の検査と面の検査を同時に行うことは出来ません。これにより様々な見落としケースが存在します。

冒頭でもお話したようにこれらの検査は不十分で時折嘘をつくのです。本当はいるのにいないと結果が出たり(偽陰性)することが往々にしてあるのです。抗生剤を飲んだ直後であったり、胃薬を飲んだりしたあとであったり、ピロリ菌を微妙に抑えるヨーグルトを摂取していたりすると多いようです。また高齢となり体の免疫システムが弱くなると反応しなくなることもあるようです。このため「診断時の検査」と「治療の成功不成功の効果判定」に異なる検査を用いる場合、最初から偽陰性となる検査であれば、正しく効果が判定されていない可能性もあるのです。実際に院長が2016-2018年にかけて治療した400人のピロリ菌陽性患者さんにおいてデータを解析したところ、6%程度の方が検査偽陰性となり他の方法で診断されました。

当院では精度を上げる、来院回数を減らすため、可能であれば同時に面(尿素呼気試験、便中抗原)の検査を行います。それにより、反応が出た検査を効果判定の際に再度行い治療後反応が出なくなればより確実に判定を行うことができます。