胸やけ・げっぷ・のどの違和感…胃カメラを受けるべき症状は?

「食後になると胸が焼ける」
「げっぷが増えて、人前で気になる」
「のどに何か引っかかっている感じが続く」
こうした症状があっても、「胃カメラを受けるほどではないかな」と受診を迷っている方は少なくありません。
まず結論からお伝えします。
胸やけ・げっぷ・のどの違和感がある方全員に、すぐ胃カメラが必要なわけではありません。ただし、症状が続く、繰り返す、食事や睡眠に支障がある場合には、一度ご相談ください。
特に、食べ物のつかえや飲み込みにくさ、意図しない体重減少などを伴う場合は、早めの評価が必要です。
今回は、それぞれの症状の背景と胃カメラを検討する目安、検査後も症状が続く場合の対応について、消化器病専門医・消化器内視鏡専門医の視点から解説します。
胃カメラの受診を迷う3つの症状
1.胸やけ――胃カメラで傷がなくても逆流は否定できません
胸やけは、みぞおちから胸の中央にかけて、熱くなる、焼けるように感じる症状です。酸っぱいものが口まで上がってくる「呑酸(どんさん)」を伴うこともあります。
代表的な原因が、胃の内容物が食道へ逆流し、つらい症状や合併症を起こす「胃食道逆流症(GERD)」です。
このうち、胃カメラで食道の粘膜に傷やただれが確認されるものを「逆流性食道炎」と呼びます。一方、逆流による症状があっても、明らかな傷が見えない場合があります。
つまり、「胃カメラが正常だったから、逆流はない」とは言い切れません。
また、症状の強さと、内視鏡で見える炎症の程度は必ずしも一致しません。粘膜の傷が軽くても、強い胸やけに悩まされることがあります。
胃カメラの所見に加え、いつ症状が出るのか、食事や姿勢との関係、薬への反応などを合わせて考えることが大切です。
2.げっぷ――実は、胃から出ているとは限りません
げっぷは、胃にたまった空気が口から出てくる自然な現象です。早食いや炭酸飲料などで増えることもあり、げっぷが出るだけで病気とは限りません。
ただし、頻繁に繰り返して生活に支障がある場合には、原因を整理する必要があります。
ここで知っていただきたいのが、げっぷには、空気が胃まで到達せず、食道に入った直後に口へ戻ってくるタイプもあるということです。「胃上性げっぷ」と呼ばれます。
このタイプでは、胃酸を抑える薬だけでは十分に改善しないことがあり、横隔膜を使った呼吸法や、空気の出し入れのパターンに働きかける治療が役立つ場合があります。
本人が意図的に出しているとは限らず、「気にしすぎ」「我慢すればよい」で済む問題ではありません。
胃カメラは、併存する炎症やほかの病気を確認するために役立ちますが、げっぷの仕組みを胃カメラだけで判定することはできません。症状の聞き取りを行い、必要に応じて専門的な検査を検討します。
3.のどの違和感――「ヒステリー球ですね」と言う前に確認したいこと
「のどに何か引っかかっている」
「飲み込んでも取れないものがある感じがする」
「食事はできるのに、何もしていないときほど気になる」
こうした症状は「咽喉頭異常感」と呼ばれます。原因となる病気が確認されない場合には「咽喉頭異常感症」、いわゆる「ヒステリー球」と説明されることがあります。
ただし、のどに違和感があるというだけで、最初からヒステリー球やストレスが原因と決めつけることはできません。
「ヒステリー球」という名前は、どこから来たのでしょうか?
「ヒステリー球」と聞くと、「感情的な人がなる病気なの?」「精神的な問題だと言われているの?」と戸惑うかもしれません。
この名前は、古い医学用語の「globus hystericus」に由来します。「globus」はラテン語で「球」を意味し、のどに球のような塊がある感覚を表しています。実際に球や腫瘍ができている、という意味ではありません。
一方の「hystericus」は、当時、この症状が「ヒステリー」と呼ばれていた病態や心理的な要因と結びつけられていたことに由来します。
しかし、その後、こうした症状は特定の性格や女性だけに生じるものではないことが分かり、1968年には、のどの部位を表す言葉を用いた「globus pharyngeus」という呼び方が提唱されました。
つまり、「ヒステリー球」は歴史的な呼び名であり、「ヒステリックな性格だから起こる」という意味ではありません。
ストレスや緊張が症状に関係することはありますが、それだけで原因を説明できるとは限りません。
診断には、原因となる病気がないことの確認が必要です
診断の前提となるのは、診察や内視鏡検査などで、症状を説明する病変がないことを確認することです。耳鼻咽喉科でののどの観察に加え、胃カメラでは食道の炎症、狭窄、腫瘍などを調べます。
食道の入口近くに、胃と同じ種類の粘膜が存在する「異所性胃粘膜」がないかも、確認するポイントの一つです。ただし、見つかっただけで症状の原因と決まるわけではありません。
胃カメラは、病気を見つけるためだけでなく、機能的な症状として治療を進めてよいかを判断するためにも意味のある検査です。
胃カメラが正常であれば、それだけでヒステリー球と確定するわけではありません。胃食道逆流や好酸球性食道炎、食道の動きの異常などが関係していないかも検討します。
「違和感」と「実際の飲み込みにくさ」は区別します
食事と関係なく違和感がありながら、食べ物は普通に飲み込めるというのが、典型的なヒステリー球の特徴です。
一方、食べ物が実際につかえる、飲み込むと痛い、次第に飲み込みにくくなっている場合は、別の病気を考えて早めに調べる必要があります。
例えば、次のような病気があります。
| 食道がん | 食道にできた腫瘍によって、食べ物が通りにくくなることがあります。 |
| 食道アカラシア | 食道と胃の境目がうまく緩まず、食道が食べ物を送り出す動きも障害される病気です。 例えるなら、「胃へ入る扉が開きにくく、そこまで運ぶ動きもうまく働かない状態」です。 |
| 食道カンジダ症 | カンジダという真菌(カビの一種)が食道で増え、炎症を起こす病気です。飲み込む際の痛みやつかえ感が出ることがあります。 |
こうした病気を確認するためにも、症状を「のどの違和感」の一言で済ませず、実際に飲み込みにくさや痛みがあるかを区別することが大切です。
受診時には、「違和感があるのは食事中か、それ以外か」「固形物や水が本当につかえるか」もお聞かせください。こうした違いが、検査や治療の方針を決める手がかりになります。
4.薬で改善しない胸やけ――「もっと胃酸を抑えればよい」とは限りません
胃酸を抑える薬を飲んでも胸やけが続くと、「もっと強い薬が必要なのでは」と考えるかもしれません。
しかし、薬が効きにくい理由は一つではありません。
胃酸を抑える薬は、逆流する内容物の酸性を弱めますが、胃の内容物が食道へ戻ってくる現象そのものを、必ずしも止めるわけではありません。
そのため、酸性の弱い内容物の逆流が症状に関係する場合もあります。
また、逆流の量は正常範囲でも食道が敏感に反応する「逆流過敏」、逆流との関連が確認されない「機能性胸やけ」など、治療の考え方が異なる病態もあります。
つまり、「薬が効かない=重症の逆流性食道炎」とは限らず、何が症状を起こしているかを見直すことが大切です。
胃カメラで明らかな異常が見つからなくても、「症状がない」「気のせい」という意味ではありません。胃カメラは粘膜の観察に優れた検査ですが、逆流の頻度や食道の動き、刺激への敏感さのすべてを評価できるわけではないからです。
こんなときは胃カメラの診断が必要です。
次のような場合は、症状を我慢し続けずにご相談ください。
- 胸やけやのどの違和感が続く、何度も繰り返す
- げっぷが多く、日常生活に支障がある
- 症状のために食事や睡眠が妨げられる
- 市販薬を繰り返し使っている
- 処方された薬を使っても十分に改善しない
- これまでとは症状の出方が変わってきた
診察では、年齢、これまでの検査結果、服用中の薬、治療経過なども踏まえ、胃カメラの必要性と時期を判断します。
特に、食べ物のつかえ、飲み込む際の痛み、意図しない体重減少、繰り返す嘔吐、原因不明の貧血を伴う場合は、早めの受診が必要です。
吐血やタールのような黒い便が出た場合は、当日中に医療機関へ相談してください。冷や汗やふらつきを伴う場合、強い胸痛や息苦しさがある場合、食べ物が詰まって唾液も飲み込めない場合は、通常の胃カメラ予約を待たず、救急受診が必要です。
胸の症状をご自身で「いつもの胸やけ」と決めつけないことも大切です。
胃痛や胃もたれも気になる方は、「胃が痛い・みぞおちが痛いとき、胃カメラは必要?」コラムもご覧ください。
胃カメラは「胃」だけを見る検査ではありません
胃カメラでは、食道・胃・十二指腸の粘膜を観察します。
胸やけやつかえ感がある場合には、食道の炎症や狭くなっている部分がないかなどを確認します。胃や十二指腸の潰瘍、腫瘍などの有無も調べ、必要に応じて組織の一部を採取する「生検」を行います。
例えば、食べ物のつかえを起こす病気の一つに「好酸球性食道炎」があります。食道に炎症が起こる病気ですが、見た目の変化が目立たない場合もあり、疑う場合には生検が診断の手がかりになります。
「胃カメラで見た目に異常がないこと」と「組織のレベルまで病気がないこと」は、同じではありません。
そのため、どのような症状があるかを詳しく伺うことは、検査で何に注意して観察し、生検を検討するかという判断にもつながります。
当院の胃カメラについては、「胃カメラ検査(上部消化管内視鏡検査)」をご覧ください。
改善しないGERD(逆流性食道炎)は専門医療機関への紹介も可能です
中原小杉元住吉ほしおか内科・消化器・内視鏡クリニックでは、薬の使用状況や内視鏡所見、症状の経過を確認し、必要に応じて専門医療機関への紹介を行います。また、専門施設では、例えば次のような検査が検討されます。
24時間食道インピーダンス・pH検査
酸性の弱い逆流も含めて食道への逆流を調べ、症状が出たタイミングとの関係を評価します。
高解像度食道内圧検査
食道が食べ物を送り出す動きや、食道と胃の境目の働きを調べます。
これらは全員に必要な検査ではありません。胃カメラだけでは分からない原因を整理し、治療方針を考えるために行います。
症状が強い場合や、適切な薬物治療でも十分に改善しないGERDでは、昭和医科大学江東豊洲病院など、食道疾患の専門的な診療を行う医療機関への紹介も可能です。
昭和医科大学江東豊洲病院 消化器センターでは、GERDに対する内視鏡的逆流防止術や外科手術なども行われています。
ただし、症状が強ければ誰でもこうした治療の対象になるわけではありません。
逆流が症状の原因となっているか、食道裂孔ヘルニアの状態や食道の動きなどを評価したうえで、専門施設で適応を判断します。
「薬でよくならないので仕方がない」と我慢を続ける前に、当院での検査・治療から必要な場合の専門施設への紹介まで、症状に応じて対応します。
胃カメラが不安で、受診をためらっている方へ
「症状は気になるけれど、胃カメラが怖い」
「以前の検査がつらかったので、できれば受けたくない」
こうした理由で、受診をためらっている方もいらっしゃると思います。
中原小杉元住吉ほしおか内科・消化器・内視鏡クリニックでは、患者さんの状態やご希望に応じて、ミダゾラムによる鎮静とペチジンによる鎮痛を組み合わせ、検査に伴う不安や苦痛の軽減を図っています。
薬剤の使用は、年齢、体格、持病、内服薬などを確認して判断します。呼吸や血圧への影響に注意し、検査中の状態を確認するとともに、検査後は十分に回復するまで院内で休んでいただきます。
効果には個人差があり、「必ず眠ったまま終わる」「完全に無痛」というものではありません。以前の検査でつらかったことや、薬への不安があれば、事前にお聞かせください。
なお、鎮静剤を使用した当日は、自動車・バイク・自転車の運転はできません。
胃カメラ検査をご不安な方へ「胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)が怖い方へ―当院が鎮静剤と鎮痛薬を組み合わせる理由」記事も掲載しております。ご覧いただければ皆様のご心配ごとが解消されるかもしれません。
胃カメラ検査の方法については「胃カメラ検査(上部消化管内視鏡検査)」ご案内しております。また、胃カメラ検査の準備については「胃カメラ検査(上部消化管内視鏡検査)の流れ」に記載しておりますので、併せて、ご覧ください。
胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)のよくあるご質問
全員にすぐ必要というわけではありません。
症状の程度や期間、年齢、これまでの検査結果などを踏まえて判断します。症状を繰り返す場合や、薬で十分に改善しない場合、食べ物のつかえ・体重減少・出血を疑う症状などを伴う場合には、胃カメラを検討します。
名前は歴史的な医学用語に由来しており、「ヒステリックな性格だから起こる」という意味ではありません。
ストレスが関係することはありますが、症状だけで心理的な原因と決めつけず、診察や内視鏡検査などで原因となる病気がないかを確認することが大切です。
胃カメラが正常というだけでは確定できません。
症状の特徴を確認し、胃食道逆流や好酸球性食道炎、食道の動きの異常などが原因ではないかも検討します。また、耳鼻咽喉科での評価が必要になることもあります。
必ずしもそうとは限りません。
胃にたまった空気が出る通常のげっぷのほか、空気が胃まで到達せず、食道に入ってすぐ戻ってくる「胃上性げっぷ」もあります。
原因によって治療が異なるため、胃酸を抑える薬だけで改善しない場合には、症状の仕組みを見直します。
胃カメラで明らかな異常が見つからなくても、症状の原因がないという意味ではありません。
逆流や食道の知覚過敏などが関係する場合もあり、症状や治療経過に応じて薬の調整や追加検査を検討します。
可能です。
当院で症状や治療経過を確認し、必要に応じて昭和医科大学江東豊洲病院などの専門医療機関へ紹介します。専門的な機能検査や、内視鏡治療・外科手術などの適応については、紹介先で詳しく評価します。
中原区・武蔵中原・武蔵小杉・元住吉周辺で、胸やけ・げっぷ・のどの違和感にお悩みの方へ
胸やけ・げっぷ・のどの違和感は、よくある症状ですが、その背景は一人ひとり異なります。
中原小杉元住吉ほしおか内科・消化器・内視鏡クリニックでは、総合内科専門医・消化器病専門医・消化器内視鏡専門医である院長が、症状やこれまでの経過を確認し、必要な検査と治療を検討します。
私が大切にしているのは、胃カメラを行うことだけでなく、その結果を、症状の改善につながる次の判断に生かすことです。
原因となる病気が見つかれば、その治療を進めます。明らかな異常が見つからなくても、症状が続く場合は背景を考え、必要に応じて専門医療機関につなげます。
「胃カメラを受けるべきか分からない」
「薬を飲んでいるけれど、症状が続く」
「ストレスと言われたが、のどの違和感が気になる」
そのような段階でも、まずはご相談ください。
| 吐血、強い胸痛、息苦しさ、食べ物が詰まって唾液も飲み込めないなどの症状がある場合は、通常のWEB予約を待たず、速やかに医療機関へ相談してください。 |
関連記事・参考文献・著者情報
関連記事
参考文献・関連情報
- 日本消化器病学会.胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021
- Katz PO, et al. ACG Clinical Guideline: Guidelines for the Diagnosis and Management of Gastroesophageal Reflux Disease. American Journal of Gastroenterology. 2022.
- Moshiree B, et al. AGA Clinical Practice Update on Evaluation and Management of Belching, Abdominal Bloating, and Distention: Expert Review. Gastroenterology. 2023.
- Rome Foundation.Rome IV Criteria:Globus
- History of Otolaryngology: Globus Pharyngeus as “Globus Hystericus”.
- 昭和医科大学江東豊洲病院.消化器センター
著者情報
著者:星岡 賢英(ほしおか よしひで)/中原小杉元住吉ほしおか内科・消化器・内視鏡クリニック 院長
聖マリアンナ医科大学医学部卒業。総合診療・消化器内科での診療経験を経て、2020年に開院。内科診療に加え、胃・大腸内視鏡検査、ピロリ菌感染症、肝疾患の診療に取り組んでいます。
主な資格
- 日本内科学会 総合内科専門医
- 日本消化器病学会 消化器病専門医
- 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
- 日本肝臓学会 肝臓専門医
- 日本ヘリコバクター学会 H. pylori(ピロリ菌)感染症認定医
